先日、南インドのカレーをいただく機会があった。それがすこぶる美味しく、もっとインド的料理を食べたくて、昨日は唯一自信を持って作れるインド的料理を作った。茹でたジャガイモを少し潰しぎみに油とスパイスで炒めた料理。ホールのマスタード、数種類のスパイスと塩で味付けするだけの、簡単だけど好きな料理。マスタードのつぶつぶ感と、ジャガイモがつぶれておこげになったところが特に美味しい。
出来上がりの味を想像できれば異国の料理はうまくいく、と思っている。南インドのカレーを振舞ってくださった方も、現地に旅して何度も自宅で試作したと言われていた。舌が作りたい味を覚えているのだろうと思う。
私の場合、このジャガイモ料理の味はネパールから国境を超えインドに入り、デリーに向かう途中で覚えた。デリー行きの列車、同じ車輌で出発を待っていた日本人旅行者が、油と湿気でふにゃふにゃになった白い箱に入った何かを食べている。聞いてみると駅で買ったという。僕らもうお腹一杯だから、よかったら全部あげるよ、と言われてもらったのは、ジャガイモ料理とプーリーだった。湯でて、荒めにつぶして味付けしたジャガイモをプーリーに包んで食べる。どちらも油でべとべとだったけど、なんとも美味しかったことを覚えている。
そう言えば列車に乗り込む前に、駅のプラットホームで一抱えもある大鍋に小ぶりのジャガイモを山のように入れ、やはりプラットホームにある公共の蛇口からの水でジャガイモを荒い、炭火のコンロでジャガイモを湯でている人を見た。何か調理して売るのだろう、とは思ったが、それがこの料理かもしれない。
だからこのジャガイモ料理をするときは、ジャガイモは丸湯でするのが私の鉄則。
実を言うとインド側に入ったときインド人と大喧嘩し、なんとかたどり着いた列車でサブバックの盗難にあう、という2つのハプニングの直後に食べた物が、人からもらった、しかも残り物の、インド版簡易駅弁とでも言うべき、ジャガイモ&プーリーだった。
というわけで、いつもこの料理を作るときはインドへの旅に思いを馳せながらの調理となる。